COLUMN

2022.11.16 2024.12.12 エリア

不動産小口化商品に関わるリスクについて

不動産小口化商品 リスク

 

投資には、必ず何らかのリスクが伴います。投資のカテゴリーには入らない預貯金にしても、金融機関が破綻した場合の払い出しについては一つの名義につき最大1,000万円の元金とその利息までとの上限が定められており、それを超えた分の保証はありません(ペイオフと呼ばれる払い出し制度)。

不動産投資にもリスクがありますし、不動産小口化商品もけっして例外ではありません。
重要なのは、想定されるリスクをまずはきちんと理解すること。そのうえで、ご自身で許容できるリスクの範囲内で投資を行うことです。
同じ不動産小口化商品でも、個々の商品ごとにリスクの大きさや影響度には差があります。なぜなら、投資対象としている物件や運用期間などが異なるからです。

ここでは不動産小口化商品に関わってくるリスクについて、個別に詳しく見ていきます。
大別すると、

  1. 価格変動リスク
  2. 信用リスク
  3. 流動性リスク
  4. 対象不動産の滅失・毀損・劣化リスクおよび環境リスク
  5. 任意組合型での無限責任リスク

といった5つのリスクが関係してきます。

1. 価格変動リスクとは?

市場での取引価格の変動に伴い、投資した時点と比べて資産の価値に違いが生じることを意味しているのが価格変動リスクです。不動産市場の相場は変動しており、 不動産小口化商品の投資対象となっている物件の価値(時価)にも影響が及ぶことになります。
所定の運用期間が終了してその物件を売却する際に売却価格が購入価格を下回っていると、その差額分が損失となります。
こうした価格変動リスクは株式などにも想定されるものですが、不動産の場合は傾向が異なってくると言えるでしょう。株式の時価(株価)には、経済情勢や金融政策、個別企業の業績などといった様々な要因が影響を及ぼし、不動産と比べて短期的な値動きも大きくなりがちです。

これに対し、不動産の時価も市況全体の動きが影響を及ぼすものの、立地や建物の状態などが深く関わってくることから、個々の物件ごとに価格変動にはかなりの差が出るケースがあります。
一般的に建物は古くなるほどその価値は低下するものですが、もともとの設計やメンテナンスによって、同じ築年数でも大きな格差が生じるのが実情です。賃貸物件で言えば、築10年以上が経過しても入居者の間で人気の衰えない物件もあれば、新築からわずか数年で空室が目立ち始めるような物件もあるのです。当然ながら、前者の価値は下落しにくく、逆に後者はより価格変動リスクが高いでしょう。価格変動リスクに留意して不動産小口化商品を選ぶ際には、資産価値が下落しにくい物件を投資対象としているか否かを注視することが重要だということです。

価格変動リスクへの考慮ポイント

資産価値が低下しにくい物件を投資対象とするために重要なポイントとして

  • エリア選定……人口動態も考慮した上で、賃貸需要の低下が起きにくいエリアであること
  • 近隣物件との差別化……同じエリアの中でもデザイン面や機能面で優れた物件であること
  • 入居者に満足いただける管理運営……入居者満足の担保や、物件価値の劣化を防ぐためのしっかりした管理運営体制が敷かれていること
    などがあげられます。

●関連記事:城南3区と都心3区の不動産投資事情の比較

 

2. 信用リスクとは?

信用リスクとは、預貯金のような金融商品の利用や投資、融資、その他の商取引などにおいて、取引相手が倒産したり、債務不履行に陥ったりすることで、当初取り決めていた元金の返還や利息・分配金などの支払いが困難になることを意味しています。不動産小口化商品においても、事業者の経営破綻などに伴う信用リスクが発生する可能性があります。
リスクを抑えるためにも、不動産小口化商品を選ぶ際には事業者のこれまでの実績や業績の推移などもきちんと確認しておくことが大切です。事業者が株式市場に上場している企業なら、財務や業績などの開示情報を事前に確認することをお勧めします。

信用リスクへの考慮ポイント

不動産小口化商品においては、「不動産特定共同事業法」についての理解もポイントとなります。
不動産特定共同事業法は、事業者の業務における「適正な運営の確保」と「投資家の利益の保護」を図ることを目的として制定された法律です。不動産小口化商品は、国土交通大臣及び金融庁長官または都道府県知事による許可申請を行い、厳しい条件を満たした事業者のみが取り扱うことができる不動産特定共同事業法に基づいた不動産投資商品となります。

しかし、そういう意味では不動産小口化商品を取り扱う会社の信用力は高いと言えますが、企業の信用力を事前に確認するのが大事なのは言うまでもありません。

 

3. 流動性リスクとは?

流動性とは、取引の対象となっている資産がいかに換金(現金化)しやすいのかを表す言葉です。
流動性リスクが高い(=流動性が低い)と、換金に時間を要したり、評価額が低くなる可能性があります。
一般的に不動産小口化商品においては商品の特性上、満期まで(10年以上の長期にわたることもあります)の運用が基本となり、流動性は低い投資商品となります。
多くの商品では中途解約が認められていないケースが多いですが、組合持分権を第三者に譲渡(売却)することで中途解約ができる場合もあります。

流動性リスクへの考慮ポイント

不動産小口化商品においては、商品の特性上、10年以上の長期運用で安定収益を得たい方にお勧めです。
長期運用に向いている以外にも、従来の不動産投資に比べて少額から投資が可能である点や、相続人に平等に分配できるので相続対策に有効な点など小口化商品ならではのメリットもあります。
また、リスク面への考慮をするうえでは、事前に中途解約の条件や手数料について確認しておくこともお勧めします。

 

4. 対象不動産の滅失・毀損・劣化リスクと環境リスクとは?

残念ながら、どれだけ堅牢な造りの建物であっても、地震や台風、豪雨をはじめとする天災や過失などによる人災によって、滅失・毀損する恐れがあります。あるいは、それらの域に至らなかったとしても、何らかの瑕疵(欠陥や不都合)が生じることが考えられるでしょう。
また、築年から年数が経過するとともに、大なり小なり設備や外壁、内装、構造などの劣化が進んでいきます。ここで挙げたような現象の発生は、すべて不動産としての価値が下落することを意味し、損失に繋がる可能性が考えられます。

天災・劣化・環境などのリスクへの考慮ポイント

天災については、構造的にできるだけ強靱な物件を投資対象としているものを選ぶことや、地盤自体が強固なエリアを対象としているものを選ぶこと、損害保険に加入することなどでリスクを軽減することができます。
特に関東エリアの不動産投資においては、首都直下型地震に対しても考慮することが重要です。

●関連記事:首都直下型地震に対して不動産投資家がすべき備え

経年劣化に関しては、そもそもの設計や仕様、メンテナンスが少なからず影響してきますから、そういった面に関して妥協を許さない物件を商品化している事業者を選ぶことが重要です。

一方、不動産特有のものとして環境リスクにも注意を払っておいたほうがいいでしょう。一般的に不動産は、学校・病院・工場・高速道路・墓地・火葬場・風俗店・パチンコ店・ゲームセンター・宗教施設・暴力団事務所などが近隣に存在していると、その価値が下落しがちです。
なぜなら、騒音や雰囲気、汚染、治安などの問題を懸念し、特に賃貸物件の場合は入居者から敬遠される恐れが生じるからです。前述したような施設がもともと存在していたエリアはもちろん、新たに建設計画が浮上すると近隣の不動産相場に少なからず影響が及ぶ可能性があります。

 

5. 任意組合型での無限責任リスクとは?

不動産小口化商品を扱う組合のうち、匿名組合は有限責任であるのに対し、任意組合は無限責任です。無限責任とは、出資者の損失が出資額を超えたとしても、損失負担する義務を各組合員がその持分に応じて有することをいいます。

任意組合型のリスクへの考慮ポイント

無限責任の発生原因は、建物に起因するものと思われます。これは、建物の立地・構造・築年数・管理状況等から判断可能ですし、事業者が保険に加入することでリスクを最小限にすることが可能です。

 

まとめ

不動産小口化商品におけるリスクと考慮ポイントについて解説してきました。では、不動産小口化商品は具体的にどのような方に向いている投資手法なのでしょうか。

<不動産小口化商品(任意組合型)のメリット>

  • 従来の不動産投資に比べて少額から投資が可能

一棟の不動産を複数の小口に分割して販売する商品であり、従来の不動産投資に比べて少額から始められる点が特徴です。
これにより、大きな投資金額を必要とする不動産投資にも手軽に参加できるようになりました。

  • 相続人に平等に分配できるので相続対策に有効

不動産小口化商品は小口に分割されているので相続人に対して平等に分けることが可能です。
そのためトラブルの原因になりやすい不公平感を解消することができます。
また、従来の不動産投資と同様に不動産税制が適用されるため、税制面からも相続対策に有効です。

  • 管理・運営に手間がかからない

一般的な不動産投資は物件を管理・運営する必要がありますが、不動産小口化商品(任意組合型)は、業務執行組合員としてプロが一括して管理・運営を行います。投資家の皆さまに煩わしい手間はかかりません。

<不動産小口化商品が向いている方>

  • 少額から不動産投資をしたい方
  • ポートフォリオとして分散投資をしたいと考えている方
  • 相続や贈与の対策に効果的なものを探している方
  • 物件管理を任せるかたちで不動産投資を検討している方

<不動産小口化商品が向いていない方>

  • 流動性が高く、短期での投資を求める方
  • ハイリスク・ハイリターンを求める方

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